
脳神経外科医 / AFRODE CLINIC 院長 — 道下 将太郎
2015年、東京慈恵会医科大学を卒業し、同大学病院で勤務。クリニックでは経営者や著名人など日常生活で高負荷を抱える人々に、薬に頼らない効率的な回復・予防医療を提供。科学的根拠に基づく安心安全な製品を提供するブランド「SECRET RECIPE」をプロデュースし、添加物不使用の食品やサプリメントを開発している。
「朝食抜き」「16時間断食」が話題になる一方、「朝食はしっかり食べたほうがいい」という従来の説もよく耳にします。医学的には、何が起きているのでしょうか。AFRODE CLINIC代表 道下将太郎医師に、血糖値変動とインスリンの働きという観点から、朝食の意味を聞きました。
記者本日は、予防医療を専門とされる道下先生に、「朝食」というシンプルだけれど奥深いテーマでお話を伺います。よろしくお願いいたします。
道下医師よろしくお願いいたします。朝食はクリニックでも相談の多いテーマです。「食べたほうがいいのか」「抜いたほうがいいのか」、両方の意見が情報として流れているので、迷う方が多いんですよね。AFRODE CLINICには表参道という土地柄もあって、経営者やパフォーマンスを問われる職種の方が多くお越しになります。皆さん共通しておっしゃるのが「自分にとって何が正解かを、データで知りたい」という言葉です。
Q1. 最近「朝食抜き」や「16時間断食」が話題になっていますが、医学的にはどう見ていますか?
記者SNSでは「朝食を抜いたら調子がよくなった」「16時間断食で痩せた」という声をよく見かけます。先生の臨床現場ではどのように見ていますか?
道下医師正直に言うと、合う人と合わない人がいるというのが現場での実感です。一概に否定はしません。仕事が夜遅く、夕食が遅めの方や、活動量がそれほど多くない方の場合、朝に固形物を入れない選択が体に合うケースもあります。先月も40代の経営者の方で、夕食22時・朝コーヒーのみ、というスタイルがハマっている方がいらっしゃいました。
ただ、「朝食抜き=健康」と短絡的に捉えるのは少し危険だと考えています。流行している方法には、それが合うライフスタイルや体質があるんですね。私はいつも「ご自身の生活と体質に合わせて選んでください」とお伝えしています。今日はその判断材料になるような情報をお話しできればと思います。
Q2. 朝食を食べないと、体内では何が起きているのでしょうか?
記者朝食を抜いた場合、体内で何が起きていると考えればよいでしょう?
道下医師夕食から翌日の昼食まで何も食べないと、約15〜18時間の絶食状態になります。この間、血糖値は緩やかに下がっていきます。問題はその後で、長時間の絶食を経て昼食を一気に食べると、血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」が起こりやすくなると言われています。
血糖値が急上昇すると、それを下げるためにインスリンが大量に分泌されます。インスリンは血糖を下げるホルモンですが、同時に余ったエネルギーを脂肪として蓄える働きも持っています。つまり、急激な血糖値の変動を繰り返すと、脂肪が蓄積しやすい体内環境ができてしまう可能性があるんです。
もちろん、すべての方にこの現象が起きるわけではありませんが、特にデスクワーク中心の方や血糖コントロールに不安のある方は、こうしたメカニズムを知っておく価値があると思います。
Q3. インスリンと体重の関係について、もう少し詳しく教えてください。
記者インスリンというと血糖値のホルモンというイメージですが、体重にも関係するのですね。
道下医師はい。インスリンの本来の役割は、食事で上がった血糖を細胞に取り込ませて血糖値を一定に保つことです。健康な状態では、必要な分だけが分泌されます。
ところが、血糖値スパイクが繰り返されると、インスリンが過剰に分泌される状況が続きます。すると細胞側がインスリンに対して鈍くなる「インスリン抵抗性」という状態になりやすいと報告されています。インスリン抵抗性が出ると、同じ血糖を下げるためにより多くのインスリンが必要になり、結果として脂肪も蓄積されやすくなる、という悪循環が起こり得るんですね。
体重が増えにくい体質を作るうえで、「血糖値の波を穏やかに保つ」という視点は意外と見落とされがちですが、私はとても大切だと考えています。
Q4. 「朝食を食べたほうがよい人」と「抜いてもよい人」の見分け方はありますか?
記者個人差があるとのことですが、見分け方の目安はありますか?
道下医師明確な区分けは難しいのですが、目安としてお話しするなら、朝食を食べたほうがよい方は次のような方です。朝から仕事や運動などで活動量が多い方、健康診断で血糖値や中性脂肪が気になる方、筋肉量を維持したい中高年の方、そして集中力をしっかり保ちたい方ですね。
一方で、抜いても大きな問題が起きにくい方もいます。夕食が遅く量も多めの方、日中の活動量が少なめの方、自分の感覚として朝に食欲がない方などです。
判断に迷ったら、ご自身に3つ問いかけてみてください。「昨夜の夕食は何時に食べたか」「朝に活動するか」「血糖や脂質の数値に不安があるか」。これらから、ご自身のタイプが見えてきます。
Q5. 朝食を食べる場合、どんな内容が望ましいでしょう?
記者朝食を摂る場合、内容はどう考えればよいですか?
道下医師避けたい朝食の典型は、菓子パンと甘い飲み物だけ、というパターンです。糖質ばかりが多く、これこそ血糖値スパイクを起こしやすい組み合わせなんですね。
朝食に含めたい要素は、大きく3つあります。
- タンパク質
卵、納豆、ヨーグルト、鶏肉など。血糖値の上昇を緩やかにし、満腹感も持続しやすくなります。
- 食物繊維
野菜、海藻、きのこ、雑穀。糖の吸収を穏やかにし、腸内環境のサポートにもつながります。
- 良質な脂質
ナッツ、アボカド、青魚、オリーブオイル。エネルギーの持続性と、ビタミン吸収の助けになります。
具体例としては、卵焼き+納豆+味噌汁+少量のごはんという和定食型や、無糖ヨーグルト+ナッツ+ベリー類といった洋朝食型などが、いずれも上の3要素を満たしやすい組み合わせです。私自身は後者の洋朝食型にプロテインを合わせるのが平日の定番です。30秒で20gのタンパク質と食物繊維が揃うので、外来前のルーティンとして気に入っています。
Q6. 「朝は食欲がない」という方も多いですよね。どうすれば?
記者朝は食欲がなくて、と感じる方はどうしたらいいでしょう?
道下医師まず疑うのは、前日の夕食です。夕食が22時以降だったり、量が多かったりすると、消化が朝までかかって食欲が出にくいケースが多いんですね。夕食を少し前倒しにする、量を抑えるだけで朝の食欲が変わる方が結構いらっしゃいます。
それでも難しい場合は、「ゼロより少量」でいいと考えます。プロテインドリンク1杯、ゆで卵1個、ヨーグルト一個など、少量から始める。あるいは、起きてから少し体を動かしてからのほうが食欲が出やすい方もいます。「完璧な朝食」を目指す必要はなくて、ご自身に合うやり方を探っていくのが現実的だと思います。
Q7. 朝食と1日の食事全体のバランスをどう考えればいいでしょうか?
記者朝食を含めた1日の食事配分について、目安はありますか?
道下医師厳密に決めるよりも、ざっくりとした目安として「朝しっかり、昼ふつう、夜軽め」をおすすめすることが多いです。研究レベルでも、同じカロリーを朝に多く摂るグループと夜に多く摂るグループでは、朝に多く摂ったほうが体重管理に有利という報告があります。
これは体内時計の影響が大きいと考えられています。日中は活動的にエネルギーを使う設計になっていて、夜は休む方向にスイッチが入る。その流れに食事のリズムを合わせると、エネルギーが効率的に使われやすいんですね。「夜に重いものを食べると太りやすい」という体感は、医学的にも説明がつくということです。
Q8. 朝のタンパク質補給が難しいとき、どんな選択肢がありますか?
記者朝にタンパク質を確保するのが難しい、という相談もよく聞きます。
道下医師体重1kgあたり1g、つまり60kgの方なら1日60gのタンパク質が一つの目安です。1食20g前後を3回というイメージなのですが、朝に20g摂るのは結構大変なんですよね。卵2個+納豆1パックでようやくそのくらいです。
そういうときに、プロテインドリンクの活用を選択肢のひとつとしてお伝えしています。あくまで補助という位置づけですが、現実的な解決策のひとつだと思います。
私が監修した SECRET RECIPE のプロテインは、ヘンプ・ソイ・エンドウ豆などの植物性原料を組み合わせ、添加物を極力減らした設計にしました。日本人の食習慣や体質に合わせて、毎日続けやすいことを重視しています。あくまで土台は食事ですが、忙しい朝の補助として活用いただければと考えています。
Q9. 朝の習慣を整えるために、食事以外で意識したいことはありますか?
記者食事以外で、朝の習慣として意識したい点はありますか?
道下医師3つだけお伝えするなら、「朝の光を浴びる」「コップ1杯の水」「軽く体を動かす」です。
朝の光は、体内時計をリセットしてくれます。起床後30分以内に窓際に立つだけでも違いがあると言われています。コップ1杯の水は、夜間の脱水を解消し、内臓をやさしく起こすイメージですね。そして軽く体を動かすこと。ストレッチや短い散歩でも構いません。それだけで食欲のスイッチが入りやすくなる方が多いんです。
Q10. 最後に読者へのメッセージをお願いします。
記者最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。
道下医師「朝食は食べるべきか、抜くべきか」という二者択一の議論になりがちなテーマですが、本当に大切なのはご自身の生活と体質に合った選択です。仕事のスタイル、活動量、体調、検査数値。これらは一人ひとり違いますから、答えも一律ではありません。
もし長く続けてきた習慣で何となく不調を感じているなら、一度血液検査を受けて、ご自身の体の状態を数値で見てみるのもおすすめです。AFRODE CLINICでは予防医療検査として、血糖変動・インスリン感受性も含めた総合パネルをご用意しています。仕組みを知れば、自分に合った選び方が見えてきます。今日のお話が、その判断のヒントになれば幸いです。
記者本日はありがとうございました。「正解はひとつではない」という視点が大事ですね。
参考文献
- Jakubowicz D, et al. High caloric intake at breakfast vs. dinner differentially influences weight loss of overweight and obese women. Obesity (Silver Spring). 2013;21(12):2504-12.
- Sakurai M, et al. Skipping breakfast and 5-year changes in body mass index and waist circumference in Japanese men and women. Obes Sci Pract. 2017;3(2):162-170.
- St-Onge MP, et al. Meal Timing and Frequency: Implications for Cardiovascular Disease Prevention: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2017;135(9):e96-e121.

