
脳神経外科医 / AFRODE CLINIC 院長 — 道下 将太郎
2015年、東京慈恵会医科大学を卒業し、同大学病院で勤務。クリニックでは経営者や著名人など日常生活で高負荷を抱える人々に、薬に頼らない効率的な回復・予防医療を提供。科学的根拠に基づく安心安全な製品を提供するブランド「SECRET RECIPE」をプロデュースし、添加物不使用の食品やサプリメントを開発している。
糖質制限、16時間断食、地中海食、ケトジェニック…ダイエット法は次々と流行しますが、「結局どれが正解?」と迷う方も多いはずです。AFRODE CLINIC代表 道下将太郎医師に、流行に左右されない本質的な7つの原則を聞きました。
記者本日は「ダイエットの本質」をテーマにお願いします。
道下医師よろしくお願いします。私自身、数百人の体型改善に伴走してきましたが、続く人と続かない人、結果が出る人と出ない人にはハッキリした共通点があります。それは「方法」ではなく「原則」を押さえているかどうかなんです。当院は表参道で予防医療を専門としていますが、患者さんの中には過去にいくつもダイエットを試して失敗してきた方が結構いらっしゃいます。共通点を見ていると、流行のメソッドに振り回されて、本質的な原則を素通りしてきたケースが多いと感じますね。
Q1. ダイエットを始める前に、まず何をすべきですか?
記者始める前にやっておくべきことは?
道下医師「現在地」を把握することです。体重・体脂肪率・腹囲、できれば血液検査の数字。これらを記録しておかないと、変化があったかどうか客観的に判断できないんですね。
あと意外と効くのが「3日間の食事記録」です。スマホで食べたもの全部を写真に撮るだけ。これで自分の食生活の現状をはじめて客観視できる方が多いんです。「自分は健康的に食べているつもりだった」が崩れる瞬間ですね。
Q2. カロリー計算は必要ですか?
記者厳密なカロリー計算は必要でしょうか?
道下医師厳密に計算する必要はありません。むしろ毎日カロリー計算する負担が原因でリバウンドする方も多いです。ただし、「摂取カロリー<消費カロリー」という大原則は揺らがない物理法則なので、これを忘れてはダメです。
「糖質制限なら好きなだけ食べて痩せる」「ケトなら食べ放題」みたいな話を見かけますが、極端な状態では成立しても、現実のライフスタイルではあまり当てはまりません。エネルギー収支が原則であることは押さえておいてください。
Q3. 7つの基本原則とはどんなものですか?
記者先生がいつもお伝えしている原則を教えてください。
道下医師大きく7つあります。
- タンパク質を毎食20g
筋肉維持の前提条件。これを死守できれば代謝の落ち込みを防げます。
- 食物繊維を毎食
血糖変動を抑え、腸内環境を整え、満腹感も持続。野菜・海藻・きのこ。
- 食事の順序を意識
野菜→タンパク質→炭水化物の順で食べると血糖値スパイクが抑えられます。
続けて、残り4つは…
- 就寝3時間前は食べない
体内時計に逆らう食事は脂肪蓄積につながりやすい。
- 水を1日1.5〜2L
代謝に必要な水分。コーヒーやアルコールはカウントしません。
- 7時間睡眠
食欲ホルモンと代謝への影響が大きい無料の予防医療。
- 毎日歩く + 週2筋トレ
激しい運動は不要。日常的な運動量を底上げするほうが続きやすい。
これら7つを「ほぼ毎日」実行できれば、特別なダイエット法に頼らなくても、ほとんどの方は体型が変わってきます。私自身もこれらを意識し始めて何年も体型は安定しています。特別なダイエット期間を設けなくても、毎日の積み重ねで十分なんですね。
Q4. 糖質制限は本当に効果があるのですか?
記者糖質制限についての先生の見解は?
道下医師短期的な減量には効果的、長期的には継続性が課題、というのが私の見方です。糖質を減らすと水分が抜けやすく、最初の数週間で体重が落ちる方が多い。これは脂肪が落ちたわけではなくグリコーゲン+水分の減少が大きいです。
長期的には「夜だけ糖質を控えめ」「日中は適量を摂る」くらいの緩やかな運用が現実的です。完全カットを長く続けると、女性の場合は月経不順、男性ではテストステロン低下を招くケースもあります。極端は持続不能、というのが原則です。
Q5. 16時間断食(プチ断食)はどうですか?
記者16時間断食の医学的評価は?
道下医師合う方には合います。ただし「合わない方もいる」という前提を忘れずに。夕食を早めに済ませて翌日のお昼まで何も食べない、というスタイルは、消化器を休める意味でも、体内時計に沿うという意味でも、合理的な側面があります。
合わない方の典型は、朝に活動量が多い方、低血糖になりやすい方、月経周期が不安定な女性。「やってみて体調が良いなら続ける、悪くなったら戻す」が原則。流行を信じる前に、自分の体の声を聞いてください。
Q6. リバウンドしない人とする人の違いはなんですか?
記者リバウンドの分かれ目はどこにありますか?
道下医師シンプルに言うと、「期間限定で頑張った」か「習慣を変えた」かの違いです。3ヶ月で5kg落とすことが目的だった方は、3ヶ月後に元の生活に戻るのでリバウンドします。
うまくいく方は「これは一生続けられる」と思えるレベルの食習慣に組み替えています。多少甘いものは食べる、外食もする、でも野菜は必ず先に食べる、夜は軽め。当院で1年以上体重維持できている方を観察すると、皆さんこのスタイルに自然と落ち着いています。完璧ではないが永続可能なやり方が結局一番強いんです。
Q7. 体重以外で見るべき指標は?
記者体重以外でチェックすべき数字は?
道下医師腹囲・体脂肪率・血液検査の3点ですね。体重は脂肪・筋肉・水分の合算なので、これだけで判断するとミスリードします。「体重は減ったのに健康診断で引っかかった」というケースもあります。
特に40代以降は、空腹時血糖、HbA1c、中性脂肪、HDL/LDLコレステロールなどの代謝系指標が「本当に健康的に痩せたか」を判定する基準になります。年1回の健康診断は活用してください。
Q8. ストレスでつい食べ過ぎてしまう人へのアドバイスは?
記者ストレスで暴食してしまう方への助言は?
道下医師意志の問題ではなくホルモンの問題として捉えてください。慢性的なストレスでコルチゾールが高い状態が続くと、食欲増進・脂肪蓄積に直結します。「我慢が足りない」と自分を責めても解決しません。
対策は3つ。睡眠を確保する、食事を3食きっちり摂る、運動でストレス発散。空腹時間が長いとドカ食いを誘発しやすいので、規則的な食事リズムを作るほうが結果的に総摂取量は減るんです。
Q9. 年齢別にダイエット戦略は変えるべきですか?
記者年代別の戦略の違いは?
道下医師20〜30代は「カロリーを少し抑える」だけでも結果が出やすい年代。一方で40代以降は筋肉量維持が前提条件になります。同じく食事を減らしても、筋肉が減って代謝が落ち、リバウンドしやすい体になりがちです。
40代以降は「タンパク質確保 + 軽い筋トレ」を最優先に。これを土台にした上で、糖質や夜の食事量を調整する、という順序が合理的です。
Q10. 最後に読者へのメッセージをお願いします。
記者最後にメッセージをお願いします。
道下医師ダイエットは「特別な期間」ではなく「一生続ける生活」だと捉えていただきたいんです。極端な制限ではなく、毎日続けられる7つの原則を徐々に身につけること。これが結果的に最短ルートになります。
方法に迷ったら、流行を追うより「自分は何が食べたいか、何が続けられるか」に立ち返ってください。AFRODE CLINICでは栄養指導と血液検査を組み合わせて、ご自身に合ったダイエット戦略を一緒に作るサポートも行っています。健康は一日にしてならず、ですから。
参考文献
- Hall KD, et al. Energy balance and its components: implications for body weight regulation. Am J Clin Nutr. 2012;95(4):989-94.
- Estruch R, et al. Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra-Virgin Olive Oil or Nuts. N Engl J Med. 2018;378(25):e34.
- Patterson RE, et al. Intermittent Fasting and Human Metabolic Health. J Acad Nutr Diet. 2015;115(8):1203-12.

