
脳神経外科医 / AFRODE CLINIC 院長 — 道下 将太郎
2015年、東京慈恵会医科大学を卒業し、同大学病院で勤務。クリニックでは経営者や著名人など日常生活で高負荷を抱える人々に、薬に頼らない効率的な回復・予防医療を提供。科学的根拠に基づく安心安全な製品を提供するブランド「SECRET RECIPE」をプロデュースし、添加物不使用の食品やサプリメントを開発している。
「ダイエットには運動が不可欠」とよく言われますが、本当でしょうか?運動の役割と、本当に効率の良い種目について、AFRODE CLINIC代表 道下将太郎医師に伺いました。
記者本日は「運動と減量」というテーマでお願いします。
道下医師よろしくお願いします。運動については「すれば良い」という単純な話ではなく、目的に応じた優先順位があります。今日はその辺りを整理してお話しできればと思います。当院は経営者やパフォーマーの方が多く、「運動する時間はあるんだけど、何をやるのが効率いいか分からない」「ジムは行ってるけど効果が出てない」というご相談をよくいただきます。
Q1. 運動だけで痩せられますか?
記者運動だけで体重を落とすことは可能ですか?
道下医師結論から言うと、食事の改善なしで運動だけで痩せるのは非常に大変です。例えば30分のジョギングで消費するカロリーは200〜250kcal程度。これはおにぎり1個分です。1時間走ってもケーキ1切れで取り戻されてしまいます。
研究レベルでも、減量においては食事の影響が運動の影響より2〜3倍大きいと報告されています。「ダイエットは食事8、運動2」という言葉がありますが、これは医学的にもおおむね正しいんですね。
Q2. では運動は必要ないということですか?
記者運動は重要ではない、ということですか?
道下医師いいえ、それは全く違います。運動は「痩せる」というよりも、痩せた体型を維持する」ために必要不可欠です。
食事制限だけで体重を落とすと、脂肪と一緒に筋肉も減ります。筋肉が減ると基礎代謝が落ちて、リバウンドしやすい体になります。運動、特に筋トレで筋肉を維持することで、リバウンドの確率が大幅に下がります。実際、リバウンドしない人の研究では、運動習慣がある方の割合が圧倒的に高いんです。
Q3. 有酸素運動と筋トレ、どちらを優先すべきですか?
記者運動の優先順位を教えてください。
道下医師ザックリ言うと、「日常的な歩く+週2回の筋トレ」が、最も効率の良い組み合わせです。完全に有酸素だけ、完全に筋トレだけ、よりもこの組み合わせが減量・健康指標の両面で優れていると複数の研究で示されています。当院でも、ジムに月12回通っているのに体型が変わらないという40代の方がいらして、お話を伺うと有酸素1時間×週5回というメニュー。これだと筋肉量が維持できず代謝が落ちている状態でした。週2回の筋トレに切り替えていただいたら、半年で見違えるように変わられました。
有酸素運動は脂肪燃焼と心血管系の改善、筋トレは基礎代謝維持と姿勢改善が主な目的です。役割が違うので、両方やるのが結果的に最短ルートになります。
Q4. 有酸素運動はどれくらいやればいいですか?
記者有酸素運動の量と頻度の目安は?
道下医師WHOガイドラインで推奨されているのは「週150分の中強度の有酸素運動」です。1日30分×5日、または1日20分×7日。中強度というのは「会話はギリギリできる、歌うのは無理」というくらいの強度です。
「ジョギング」と聞くとハードルが上がりますが、早歩きでも十分中強度に入ります。通勤を1駅歩く、エスカレーターを階段に変える、これだけで週150分は意外と達成できます。「特別な時間を作る」より「日常に組み込む」ほうが続きやすいですね。
Q5. 筋トレは何をやればいいですか?
記者筋トレの種目選びはどうしたらいいですか?
道下医師初心者は大きい筋肉を使う3種目から始めればOKです。
- スクワット
下半身の大きい筋肉(大腿四頭筋・大臀筋)を使う。代謝アップ効果が大きい。自重で15回×3セットから。
- プッシュアップ(腕立て)
胸・肩・腕を一度にトレーニング。ヒザつきから始めて慣れたらフルへ。
- プランク
体幹を鍛える基本種目。30秒キープから始める。姿勢改善・腰痛予防にも。
これを週2回、1回20〜30分でも、3ヶ月続ければ体組成は確実に変わります。最初からジムに通わなくても、自宅で十分です。私自身も忙しい時期は自宅で20分のクイックトレーニング、余裕がある日にジムでガッツリ、というメリハリをつけています。
Q6. HIIT(高強度インターバルトレーニング)はどうですか?
記者短時間で効率がいいと話題のHIITは?
道下医師HIITは時間効率の高い運動法として、医学的にも有効性が示されています。1回20分以下で、有酸素+筋トレ的な効果が得られます。「アフターバーン効果」と呼ばれる、運動後の代謝亢進が継続するのも特徴ですね。
ただし、初心者にはハードル高めです。心拍数が一気に上がるので、運動経験のない方や心血管系のリスク因子を持つ方は、まず通常の有酸素運動から始めることをおすすめします。週1〜2回をスパイス的に取り入れる、というのが現実的な使い方です。
Q7. 朝の運動と夜の運動、どちらがいいですか?
記者運動するタイミングは?
道下医師「続けやすい時間」が一番というのが私の答えです。朝も夜もそれぞれ生理学的には特徴がありますが、続かない時間帯に無理して入れると意味がないので、ライフスタイルに合わせるのが優先です。
強いて言えば、朝は脂肪燃焼に有利、夜は筋トレのパフォーマンスが出やすい、という傾向があります。ただ就寝3時間前以降の激しい運動は睡眠の質を下げるので避けたほうが無難です。
Q8. 運動の前後に栄養補給はどうしたらいい?
記者運動前後の栄養補給で意識することは?
道下医師運動の1〜2時間前に軽く糖質+タンパク質を入れておくと、エネルギー切れを防げます。バナナ+ヨーグルト、おにぎり、などが無難です。空腹で運動すると筋肉が分解されやすいんですね。
運動後は30分以内のタンパク質補給が効率的です。食事のタイミングが合わない場合、プロテインドリンクが現実的な選択肢になります。私自身もジムの後はプロテイン1杯を入れることが多いです。
Q9. 運動が続かない人へのアドバイスは?
記者続かない方への助言は?
道下医師「やる気」ではなく「仕組み」で続けることをおすすめします。3つだけ提案します。
1つは習慣に紐付ける。「歯磨きの後にスクワット10回」「お風呂上がりにストレッチ」のように、既存の習慣にくっつけると継続しやすい。2つ目は記録する。アプリでもノートでも、可視化されると続きます。3つ目は仲間/トレーナーと一緒に。一人で続けるのが難しい方は、伴走者がいると確実に続きやすくなります。
Q10. 最後に読者へのメッセージをお願いします。
記者最後にメッセージをお願いします。
道下医師運動は減量の主役ではありませんが、「健康的に痩せる」「リバウンドしない」「体力を維持する」ためには必須です。激しい運動でなくていい、毎日少しでいい、続けられるレベルから始めてください。
「運動が苦手」「ジムに行く時間がない」という方こそ、まずは1日5,000歩を目標にしてみてください。これだけでも、何もしないのと比べて、健康指標が大きく変わってきます。AFRODE CLINICでは現在の体組成と血液データから、ご自身に合った運動の優先順位を一緒に組み立てるサポートも行っています。
参考文献
- Bull FC, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462.
- Schwingshackl L, et al. Impact of different training modalities on anthropometric and metabolic characteristics in overweight/obese subjects. Obes Rev. 2014;15(2):106-19.
- Wing RR, Hill JO. Successful weight loss maintenance. Annu Rev Nutr. 2001;21:323-41.

