
「子どもに卵アレルギーがあって、おやつ選びのたびに裏の表示を読んでいる」
「友人の家に手土産を持っていきたいけれど、卵アレルギーの家族がいると聞いた」
卵は、お菓子づくりの材料としてとても身近です。クッキー、ケーキ、ドーナツ、プリン。スーパーやコンビニの棚を見渡すと、卵を使っていないお菓子を探すほうが難しいかもしれません。
では、卵アレルギーがある人のお菓子は、何を見て選べばよいのでしょうか。
今回は、AFRODE CLINIC 代表医師・道下将太郎先生に、表示の読み方から「焼き菓子なら大丈夫?」という疑問、人に贈るときの気づかいまで聞きました。
Q1. そもそも卵アレルギーは、体の中で何が起きているの?
記者最初に基本から教えてください。卵アレルギーというのは、どういう状態なのでしょうか。
道下医師「食べものに含まれるタンパク質を、体の免疫が“異物”と勘違いして反応してしまう状態です。
卵の場合は、主に卵白に含まれるタンパク質が原因になることが多いと言われています。じんましんやかゆみ、せき、腹痛などが出ることがあり、まれに全身に強い症状が出るアナフィラキシーにつながることもあります。」
記者子どものアレルギー、という印象があります。
道下医師「乳幼児では、卵は原因として多い食物のひとつです。成長とともに食べられるようになるお子さんも少なくありません。
ただ、大人になっても続く人もいますし、どこまで食べられるかは本当に人それぞれです。だからこそ“卵アレルギーの人はこれなら大丈夫”という一律の答えはない、というのが出発点になります。」
Q2. 市販・スーパーのお菓子は、まず表示のどこを見ればいい?
記者スーパーや市販のお菓子を選ぶとき、まずどこを見ればいいですか。
道下医師「袋や箱に入って売られている加工食品には、原材料表示とアレルゲンの表示があります。卵は、表示が義務づけられている“特定原材料”のひとつです。
見るのは、原材料名のなかにある“卵”の文字と、その後ろや欄の最後にある“(一部に卵・乳成分・小麦を含む)”のような表示です。」
記者「卵」という文字を探せばいい、ということですね。
道下医師「基本はそうです。ただ、いくつか知っておくと迷いにくくなることがあります。
ひとつは、“玉子”“たまご”“エッグ”“鶏卵”のように、別の書き方で表示されている場合があること。もうひとつは、鶏の卵だけでなく、うずらなどの卵も“卵”として扱われることです。
逆に、魚の卵、いくらやたらこは、表示のうえでは“卵”には含まれません。これは魚卵として別に考えます。」
記者同じ商品でも、表示が変わることはありますか。
道下医師「あります。原材料や製造する場所が変わることがあるので、“前に買ったから大丈夫”ではなく、買うたびに表示を見る習慣をつけておくと安心です。」
Q3. 「同じ工場で卵を含む製品を製造しています」は、どう受け止めればいい?
記者表示の近くに「本品製造工場では卵を含む製品を製造しています」と書かれていることがあります。これは食べないほうがいいのでしょうか。
道下医師「これは“注意喚起の表示”と呼ばれるもので、原材料として卵は使っていないけれど、製造の過程で微量に混ざる可能性がある、ということを知らせるものです。
大事なのは、この表示はメーカーが任意で書いているもので、書かれていないからといって混入の可能性がゼロとは限らない、という点です。」
記者受け止め方は人によって違う、ということですか。
道下医師「そうです。ごく微量でも症状が出る人にとっては大切な情報ですし、医師と相談したうえで“このくらいなら食べてよい”と決めている人もいます。
どちらに当てはまるかは、表示だけでは判断できません。普段から診てもらっている医師と、どこまで避けるのかを一度はっきりさせておくのがいちばんです。」
Q4. 加熱した卵なら大丈夫?焼き菓子なら食べられる?
記者「卵アレルギーでも、焼き菓子なら大丈夫」という話を聞いたことがあります。本当でしょうか。
道下医師「“加熱すると反応しにくくなる人がいる”のは事実です。卵のタンパク質のなかには、熱で形が変わって反応しにくくなるものがあるからです。
ただ、熱に強いタンパク質もあるので、焼き菓子でも症状が出る人はいます。“焼いてあるから大丈夫”とは言えません。」
記者では、どう判断すればいいのでしょう。
道下医師「食べられる範囲は、医療機関で少しずつ食べて確かめる検査(食物経口負荷試験)などをもとに、医師が判断するものです。
最近は、必要以上に除去しすぎず、食べられる範囲は食べていく、という考え方が基本になっています。だからこそ自己判断で試すのではなく、“あなたはここまでなら大丈夫”という線を医師と一緒に決めることが大切です。」
Q5. 卵アレルギーの人のお菓子を選ぶとき、具体的にどんな手順で見ればいい?
記者実際にお菓子を選ぶ場面での手順を教えてください。
道下医師「私なら、こういう順番で見ます。
- 原材料名とアレルゲンの表示に“卵”(玉子・たまご・エッグなども)がないか
- 注意喚起の表示(同じ工場・同じ設備で卵を扱っている等)があるか、それを本人が避けているか
- 表示がない売り方(その場で作って売るもの)でないか
3つめは見落とされがちです。」
記者表示がない売り方、というと?
道下医師「たとえばお店の中で焼いて、その場で量り売りしているパンやお菓子、カフェやレストランで出されるデザートなどは、アレルゲンの表示の義務の対象外です。
表示がないから卵が入っていない、ということではありません。お店の人に原材料を確認できるか、確認できないなら避ける、という判断になります。」
記者「卵不使用」と大きく書いてあるお菓子もありますね。
道下医師「わかりやすくて助かる表示ですね。それでも、裏の原材料表示と注意喚起の表示は合わせて見ておくことをおすすめします。“卵を使っていない”と“卵が一切混ざらない”は、同じ意味ではないからです。」
Q6. 卵アレルギーの人にお菓子を贈るとき、気をつけることは?
記者自分や家族ではなく、相手に卵アレルギーがある場合。手土産やギフトで気をつけることはありますか。
道下医師「いちばん大切なのは、事前に聞くことです。“卵アレルギーがある”と一言で言っても、加熱した卵なら食べられる人もいれば、注意喚起の表示があるものも避けている人もいます。どこまで避けているかは、相手にしかわかりません。」
記者聞きにくい、と感じる人もいそうです。
道下医師「“好みやアレルギーで避けているものはありますか”と聞けば、自然に伝えてもらえることが多いと思います。
それから、原材料表示がきちんとついた商品を選ぶこと。手づくりのお菓子や、表示のない量り売りのお菓子は、相手が自分で確かめることができません。箱や袋を開けて詰め替えたりせず、表示がついたまま渡すのも思いやりです。」
記者贈る側が「これなら安全」と決めないほうがいい、ということですね。
道下医師「そうですね。贈る側にできるのは、相手が判断できる材料を一緒に渡すことです。食べるかどうかを最後に決めるのは、食べる本人です。」
まとめ:卵アレルギーのお菓子選びは「表示を読む」と「どこまで避けるかを知る」の両輪
卵アレルギーの人のお菓子選びで大切なのは、
- 原材料名とアレルゲンの表示で「卵」(別の書き方も含む)を確認すること
- 注意喚起の表示は任意で、書かれていなくても混入がゼロとは限らないと知っておくこと
- 「焼き菓子なら大丈夫」とは限らず、食べられる範囲は医師と決めること
- 贈るときは事前に聞き、表示のついた商品を表示ごと渡すこと
表示を読む力と、自分(相手)がどこまで避けるのかを知っていること。この2つがそろうと、お菓子選びはぐっと迷いにくくなります。
編集部より|卵・乳製品・小麦粉を使わない焼き菓子のギフト
最後に、編集部から一つご紹介です。
南青山のカフェ「L for You(エルフォーユー)」の焼き菓子は、卵・乳製品・小麦粉を使わずにつくられています。オンラインショップから、焼き菓子をギフトとして贈ることができます。原材料の選定と製法の設計には、AFRODE CLINIC が監修として関わっています。
※卵・乳製品は使用していません。ただし、原材料がつくられる場所の近くで卵・乳製品を扱っている場合など、原材料由来の微量の混入(コンタミネーション)までは否定できません。
※クルミ・アーモンドなどのナッツや、大豆を使用している商品があります。
※原材料は商品ごとに異なります。ご購入の前に、各商品ページの原材料表示をご確認ください。
参考文献
- 消費者庁「食品表示基準について」/「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」
- 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン2021」
- AMED研究班「食物アレルギーの診療の手引き2023」
